静岡の取り組み
2016.11.07

静岡県の農業版オープンイノベーション(1)
世界の拠点を目指し、先端農業推進プロジェクト始動へ
(1/2)

現在、農業分野で革命とも呼べる大きな変化が起こりつつある。独バイエルの米モンサントの買収など農薬・種子で圧倒的なシェアを持つ農業関連企業の大型買収報道が相次ぐ。その一方でIoT、ビックデータ、人工知能、ロボットなどの最新技術が農業にも取り入れられ、大幅な生産性向上が期待されている。また参加各国で合意に達したTPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)が発効すれば、農産物にかかる関税が撤廃・削減され、国内農業に大きな影響を及ぼす。

一方、需要側では、ゲノムなどの生命科学や社会健康医学などの発達により、食と健康、病気の関係性の解明が進んでいる。機能性食品に代表される健康増進効果の高い食品、その材料としての高品質な農産物の需要が、アジア諸国の経済発展とあいまって、世界の中で急増することが見込まれる。農業はまさに需要・供給の両面から見て大きな転換期に差し掛かっている。

こうした状況を踏まえ、日本政府も2016年8月「未来への投資を実現する経済対策」を閣議決定し、その中で民需主導の持続的な経済成長と1億総活躍社会の着実な実現につながる施策を中心に、総合的かつ大胆な経済対策を講ずるとしている。農林水産分野では輸出促進と競争力強化など、攻めの農林水産業の実現に向けた施策が示された。そうした方針に基づき、農林水産省は「スマート農業」の確立やその普及に向けた取り組みを進めている。

産官学・農商工連携のオープンイノベーションで農食健を総合した科学技術・産業を振興

こうした流れを受け、一早く静岡県では先端農業推進プロジェクトを進めている。同プロジェクトは、先端科学や製造業のモノづくり技術を農業分野に応用することによって、農産物の高品質化、高機能化、高収量化、低コスト化による生産性向上を図り、農業の競争力強化に取り組むことを目的としている。加えて、高齢化社会における健康長寿を志向するマーケットニーズに対応した健康増進効果の高い農産物やその加工品の生産拡大、付加価値向上を図ることを狙いとする。

先端農業推進プロジェクトの目的を実現するため、静岡県は、産官学・農商工連携のオープンイノベーションにより、農業・食品・健康を総合した科学技術・産業を振興し、革新的なモノ、サービスを生み出すための研究・教育・知財ビジネス拠点として「農食健科学・産業イノベーションセンター(仮称)」を沼津市に設ける計画だ。開所は2017年夏ごろの予定である。

「農食健科学・産業イノベーションセンター」では、アグリ・イノベーション・プロジェクトが推進される。同プロジェクトでは、機能性や満足度の高い食品(スマートフード)のバリューチェーンを構築する。そのため同センター内に、アグリ・インフォマティクスの研究開発拠点、次世代栽培システムの研究開発拠点、アグロメディカルフーズ(AMF)の研究開発拠点(AMFoSセンター)、研究・教育・人材育成の拠点、知財ビジネスの拠点を設ける構想である。

アグリ・インフォマティクス(農業情報科学)の研究開発では慶應義塾大学と連携し、篤農家の暗黙知となっている栽培技術の見える化・学習システム化に取り組む。次世代栽培システムの研究開発では、理化学研究所、慶応義塾大学等と連携し、新開発の次世代型栽培実験装置を用いて、植物の最適な栽培条件を探索する。同装置は、光、温度、湿度、CO2濃度、風速などが精密制御できる。この装置で再現できる環境条件は、理論的には約12億通り以上、植物生育に差異が見られると考えられる実質組み合わせ約30万通りあるという。このほか、光を用いて微量ガスを検知する最先端の測定技術が理化学研究所から提供され、病害虫の早期発見・防除を可能にする。すでにイチゴの炭疽病の早期発見で開発が進んでいる。さらにゲノムなどの技術を活用し、新品種の開発や優れた種苗の選抜も行う予定だ。

AMFoSセンター(仮称:アグロ・メディカル・フーズ・サイエンス・センター)では、健康増進効果の高い農産物、食品など健康長寿を志向する市場が求める食品を、科学的な裏付けの下に提供するバリューチェーンの構築を目指す。

これらの研究機関・研究者を核とし、研究・教育・人材育成では、大学・大学院、研究機関、企業等の研究者の交流を促進する。また研究と企業ニーズのマッチングなどによる研究者のキャリアパス構築の支援、高校と大学の連携による優秀な研究者のタマゴの早期発掘・教育を推進させる。知財ビジネスでは、上記活動を通して生み出された知財を活用したコンサルティング、機能性の研究成果を生かした新商品開発のコンサルティング、マーケットインのAMFなどの商品の継続的改善に関するコンサルティングを実施する。

新着記事

静岡県経済産業部
産業戦略推進センター
「オープンイノベーション静岡」
TEL:054-221-2578
sangyo-senryaku@pref.shizuoka.lg.jp

ページトップへ