インタビュー
2016.03.18

目指すは「中堅企業が中小企業をけん引していく新たな地域経済の姿」静岡県経営者協会・会長インタビュー

静岡県は2008年のリーマンショック、その後の超円高で、県内産業全体の製品出荷額が19兆円から15兆円へと激減した。円高の影響は輸出型大手企業の海外進出を加速させ、県内産業の空洞化が進んだ。この危機を打開するため、静岡県経営者協会は「中堅企業が中小企業をけん引していくという新たな地域経済の姿」を描いた。このビジョンを、静岡県と同県の企業団体が共有し、生まれたのが「オープンイノベーション静岡」である。静岡県経営者協会会長で産業戦略推進センター「オープンイノベーション静岡」の顧問を務める岩崎清悟氏に静岡県の産業活性化にかける想いを伺った。(聞き手:テクノアソシエーツ 宮崎信行)

――今回の「オープンイノベーション静岡」の取り組みに対して、産業界側も全面的に支援しています。

静岡県経営者協会会長で産業戦略推進センター「オープンイノベーション静岡」の顧問を務める岩崎清悟氏

静岡県による新たな産業政策「オープンイノベーション静岡」は静岡県経営者協会の働きかけがキッカケで実現しました。静岡県は輸出型のものづくり企業が集積している地域です。2008年のリーマンショック、その後の超円高、さらにはグローバルな産業構造の変革により、県内産業全体の製品出荷額は19兆円から15兆円へと激減しました。円高の影響で輸出型の大手企業は海外進出を加速させ、現地生産を始めました。体力のあるTier1も大手企業に続き海外へ進出しました。このため県内産業は空洞化の危機に直面しました。その後アベノミクスで円安に振れてはいますが、厳しい状況に変わりはありません。このままでは、大手企業に依存してきたTier2以下の産業はもとより、県内産業全体は縮小するばかりです。

こうした危機的状況の中、静岡県内の企業約600社が加盟する静岡県経営者協会は、静岡県のものづくり産業の明るい未来のために経営改革をテーマとした議論を始めました。そこで出てきたアイデアが、大手企業に代わって中核となる強い中堅企業を育成し、中堅企業が中小企業をけん引していくという新たな地域経済の姿です。従来、県の産業政策は、主に大手企業に依存する中小企業の自立を支援するものでした。そこで産業界の立場から、産業支援の重点対象を中堅企業へ転換するように県側に要望を出しました。県の産業成長戦略会議において、静岡県、産業界、金融界が共通の危機意識の下、議論して生まれた一つの形が、今回の中堅企業の育成に重点を置いた事業支援プラットフォーム「オープンイノベーション静岡」です。

――「オ―プンイノベーション静岡」では、アドバイザリー・ボードが重要な役割を果たしています。

「オープンイノベーション静岡」の主役は、あくまで新たな事業展開を目指す中堅企業です。この仕組みを支えている大きな原動力が、中堅企業の技術・製品の目利き役、経営への指南役として設置されたアドバイザリー・ボードです。メンバーの選定には、静岡県経営者協会が全面的に協力しました。その結果、国内外での事業経験が豊富な現役の経営者5名、産業支援機関の代表者2名、計7名の方が賛同し、協力していただくことになりました。事務局職員にも静岡県経営者協会、静岡県銀行協会、静岡県信用金庫協会から1名ずつ派遣しており、まさに県と産業界がスクランブル体制で県内産業の支援に取り組んでいます。

アドバイザリー・ボードの会合は、月1回開催されます。本業が多忙の中、ボードメンバーのほぼ全員が毎回2時間にわたる会議に参加し、支援先企業の経営者による事業計画の説明に対して評価、助言を行っています。しかも、支援企業の技術データを事前に入手して、予習して臨む真剣ぶりです。そのため、支援先企業の経営者に対するアドバイスも的確でシビアなものになります。

――アドバイザリー・ボードの会議に参加されている中堅企業の経営者の印象はいかがでしょうか。

自社の技術を生かして何とか新たな事業を生み出そうというマインドを持っている経営者の方が、多いことが分かりました。ただ、中堅企業の多くは、やはりマーケティング力が強くありません。これまで、大手企業の傘下で部品の仕様が提示され、コスト管理をしながら部品を生産していたため、仕方がないことです。自社の独自製品を開発するにあたっては、どのような製品にマーケットニーズがあり、その製品の市場規模がどの程度か、どういう競合企業、競合技術・製品があるのか、ある程度のシェアを獲得するにはどれくらいの投資が必要か、といった情報を得るためのマーケティングを行わなければなりません。さもなければ事業戦略を立てられません。まして事業を成功させるのは難しいでしょう

中堅企業がリスクを覚悟して新たに切り拓こうとする市場はマスマーケットではなく、ニッチマーケットです。自社でマーケットを精査することが、マスマーケット以上に求められます。マーケットを見ていなければ、自社の技術、製品、事業に対する評価は独り善がりになりがちです。また、新たな事業分野の可能性にも目を奪われがちです。こうしたことを検討すると、場合によっては既存事業のドメインの中で、その事業をブラッシュアップする選択肢も出てくるわけです。アドバイザリー・ボードの会議を通して、まずこのような"気付き"を得られることが支援対象企業の経営者の方々にとって貴重なことではないかと思います。

――「オープンイノベーション静岡」の今後の取り組みについて、お聞かせください。

道は厳しいですが、この1年で形はできたと思います。後は、企業経営と同様で決めた方針を貫き、継続することが重要です。県内に眠る事業可能性の高い技術や製品を発掘し、繰り返し事業化支援を行っていきたいと考えています。

結局、事業を動かすのは経営者であり人です。意欲はもちろん、マーケットをつかみ事業計画にしっかり落とし込める経営者、さらにリスクを把握したうえで新たな投資を実行できる決断力、既存事業と新規事業に社内資源を最適配分できる経営マネジメント力を持つ経営者を、少しでも多く育成できればと考えています。

既存事業も継続している中で、短期間で成果を出すのは難しいと思います。ただ、現在、アドバイスを受けている中堅企業の経営者の方々は、経営者として一皮剥けていくと思います。そういう企業の中から新しい事業が生まれてくることを期待しています。是非とも成功事例を生み出し、静岡県経営者協会としてもそれを会員企業と共有し、横展開していきたいと考えています。それによって県内産業全体を活性化できればよいと思います。今後も、次世代を担う若い経営者を積極的に支援していきます。

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